CMSはシンプルなライセンス体系、標準技術、ロール管理がカギ

鈴木由紀子

プロフィール

  • 鈴木由紀子さん
  • 年齢:37歳
  • 勤務先:大手ホールディングカンパニー
  • 職種:広報部 広報担当
  • 社会人暦:16年
  • ウェブ業務暦:10年(7年)
  • 勤務時間:一日10時間程度
  • プライベートも大切にしたい。
  • 担当サイト:コーポレートサイト・
    社内ポータルサイト

※鈴木由紀子さんは実際のユーザーの声から生まれた顧客モデルです。

持ち株会社への移行をきっかけに、サイト拡充プロジェクトが暗礁の乗り上げたことを自覚した鈴木氏は、CMSの再選定を決意。新たな要件を定義して検討した結果、浮上したのは意外な製品だった……。

■明確な目的意識を基にCMSを決定

Webマーケティングの重要度は高まるばかり。今や、顧客は十中八九インターネットからアクセスしてくる。Webサイトはまさに“企業の顔”であり、そこで提供できる情報が今後の取引の成否を大きく左右する。

 そこで大手企業のA社は、コーポレートサイトの大幅な拡充に着手することにした。陣頭指揮を執るのは、広報部の鈴木由紀子氏(仮名)。通常の広報 業務に加えて、10年ほど前から同社のコーポレートサイトと社内ポータルサイトの運営を任されている。広報部員が少ないことから、実際のサイト更新や簡単なアクセス解析作業などにも携わっている。

 コーポレートサイト拡充のポイントは、発信する情報量の増加だった。幸い、同社には充実した内容を誇るイントラネット環境があり、一部のコンテン ツはそのままコーポレートサイトに再利用できる。しかし現状では、自社開発の更新ツールを使って鈴木氏が手作業でコンテンツを“移す”ことが必要だ。イン トラネットの情報が更新されると、自動的にコーポレートサイトにもそれが反映される仕組み、つまり各部署の社員とWebを統括する広報がGive & Takeになる仕事の仕組みが作れないだろうか──。こうした発想から、企業向けコンテンツ管理システム(以下、CMS)の導入を検討することになった。

CMSの選定に当たって鈴木氏が掲げた要件は、以下の5つ。

  • HTML以上の高度なプログラミング知識のいらないもの
  • リスク管理の概念がしっかりしているもの
  • 情報更新の効率向上を望めるもの
  • 日本で導入実績の高いもの。外資系ベンダーの製品でもよいが、その場合は信頼の置ける国内代理店が扱っているもの
  • 自社のニーズを過不足なく満たしていて、価格もそれほど高くないもの

 

こうした観点から検討した結果、最初に候補から外したのが「FatWire Content Server」だった。テンプレート作成にある程度のプログラミングスキルが必要で、公表されている国内の導入実績も当時はそれほど多くなかった。また、 多言語、パーソナライズ、動的配信が可能など、高機能ではあるがそれらの機能が自社に必要とは思えなかった。限られたユーザーで利用するシステムの割には、高価に感じられたのもマイナスだった。

そうした中、自社の情報システム部門の紹介もあって急浮上したのが「CMS B」(仮名)という製品だった。日本全国に拠点を持つIT企業が販売代理店を務めており、抜群の国内導入実績を誇っていた。中でも最も引かれた特長は、“誰もが簡単にサイトのテンプレートを作成ができる”と強調されていた点だ。これなら情報システム部門に頼らず、広報部だけで扱えると思い、「CMS B」の導入を決定。部門トップもそれを承認した。

■企業事情の変化で立ちはだかった深刻な問題

「CMS B」の販売代理店の「段階的に導入していきましょう」というコンサルティングもあり、新システムは約3カ月で本番稼働を果たした。CMSの導入により、イ ントラネットとの連動はまだ果たせていないが、コーポレートサイトの自動更新は実現し、作業は楽になった。また、サイトの変更に際してはすべて履歴が残さ れるため、万一の場合は詳細に調査することもできる。

ただ、予想外のこともあった。「CMS B」のテンプレート作成には独自技術の習得が必要で、思っていたほど簡単ではなかった。情報システム部門に依頼すると、“これは独自性が強く、僕たちでもちょっと時間をかけて勉強しないとマスターできない”と言われた。「CMS B」のユーザー会に参加すると、導入各社が同じような悩みを抱えていた

また、コーポレートサイトが充実するにつれて社内外からの期待が高まり、「イントラネットのコンテンツを承認ワークフローを経由してコーポレート サイトに配信したい」「各事業部でコンテンツを投入し、見込み客の開拓をしたい」「アンケートなどの動的配信を簡単に利用したい」といった要望が寄せられ るようになった。だが、「CMS B」は広報部の限られた担当者による限定した使い方には向いているが、これらの全社展開は実現が難しかった

 そして、より大きな壁が立ちはだかった。A社の持ち株会社化により、思わぬライセンス契約問題が生じてしまったのである。「CMS B」のライセンスは、“サーバ単位”ではなく“企業単位”で発行される体系となっていた。そのため、「CMS B」を動かしているサーバは従来通り1台のままで あるにもかかわらず、持ち株会社は「CMS B」を利用できるが事業会社は利用できないということになってしまった。事業会社も「CMS B」を利用するためには、それぞれ追加ライセンスを購入する必要がある。だが、事業会社が15社となったA社の場合、それは莫大な金額に跳ね上がることを 意味する。

■このままでは続かない”と製品の再選定を決意

持ち株会社化し広報部門を集約したことによって、企業グループ全体のブランディングと各社、各部門の顧客接点であるWebサイトを拡充したいとい う気運が経営トップの間で盛り上がっていた。しかし、CMSとして「CMS B」を利用している限り、事業会社のサイトへ持ち株会社のコンテンツを適用したり、事業会社のサイトのコンテンツを持ち株会社のコーポレートサイトに自動 的に反映させることは不可能だ。仕方がないので、事業会社のコンテンツは、鈴木氏ら広報部のメンバーが自らHTMLを記述して更新することになった。

しかし、事業会社は15社である。コーポレートサイトの拡充に加えて各社のサイトを更新する作業の負荷は想像以上だった。鈴木氏は“こんなやり方をいつまでも続けるわけにはいかない”と感じるようになった。

そこで鈴木氏は、本来の目的の再確認と、持ち株会社制度に適したCMSを新たに選定し直すことにした。

サイトの発展を考慮すればContent Server

今回は、「CMS B」の導入で学んだ教訓を踏まえて、以下の3要件を掲げた。

  • 将来的な発展を受け止められる高度な機能を有したもの(自社が将来目指す利用形態の実績を有するもの)
  • 数百人規模の編集体制への拡大を容易に実現できるもの
  • 慣れない独自仕様ではなく、技術者を見つけやすい標準技術に準拠したもの

これらを満たすCMSという視点で市場を見渡してみると、そこで浮かび上がってきたのは、何と1回目の選定で最初に落とした「FatWire Content Server(CMS・コンテンツ管理システム)」(以下、Content Server)だった。

この製品は、コンテンツとして、テキスト、イメージ、PDF、オーディオ、ビデオを含むすべてのタイプの情報資産を管理できる。また、コンテンツ の配信方法として、Content Serverで作成されたコンテンツを各Webサーバに定期的に配信する静的配信と、情報を変更したタイミングでリアルタイム配信できる動的配信の2つの 機能を持ち、パーソナライズドサイトの構築も可能。Javaベースのポータルサーバとの連携性も高く、コンテンツ管理の効率と情報資産の再利用性を大幅に 向上させることができるのだ。

そして何より、問題となっていたライセンス体系が解決することが大きかった。Content Serverは、柔軟で高い拡張性を維持できるCPUライセンス体系となっている。ユーザー数や展開企業の増加に左右されないので、事業環境やニーズの変化によるコンテンツ作成体制の拡大にも対応できるのだ。

■ここがポイント! <CPU単位のライセンス体系>

CMSの選定においては、表面的な価格よりも製品のライセンス体系が重要になる。「複数サイトを扱えること」を要件として挙げた大成建設は、「ユー ザー数ごとや作成したサイトごとの課金形態ではなく、CPU単位のライセンスなので、コンテンツをいくら作成してもコストが跳ね上がる心配がない」ことが FatWireを導入した理由の1つとなった。(大成建設のFatWire導入事例
 
伊藤忠テクノソリューションズもまた、この点を評価している。「ページ数、サイト数、テンプレート数、権限ユーザー数が無制限の導入ライセンスが用意されているため、初期費用を抑えつつ、サイト規模に応じて拡張できる」という。(伊藤忠テクノソリューションズのFatWire導入事例
 
ワールドワイドに拠点を持ち、多くのスタッフがWebサイトに携わっているクラリオンにとっても、ライセンスは切実な問題だった。「中長期的には全 世界で何人がウェブサイトに携わることになるのかわからないことから、ライセンス形態はユーザー単位ではなくCPU単位であることが必須」だった。(クラリオンのFatWire導入事例
 
サイトの規模やユーザー数は、現時点だけでなく将来的な拡充も視野に入れて検討する必要がある。すると、有利なのはどのようなライセンス体系だろうか?
 さらに、Content Serverのテンプレートは「CMS B」のような独自技術ではなく標準技術であるJSPタグで作成できるため、Javaを学んだことのある技術者なら容易に対応できる。独自な技術の研修期間が不要なので、全グループ的に展開が可能だった。
 

■ここがポイント! <独自技術か標準技術か>

サイトの規模も小さく、特定のスタッフがテンプレートを作成するだけなら、独自技術でもあまり問題ないかもしれない。だが、さまざまなスタッフがサ イト構築やコンテンツ制作にかかわる(それができるのがCMSのメリットでもある)環境では、標準技術のメリットが際立ってくる。

 鈴木氏は、こうした特長を評価してContent Serverへのリプレースを部門トップと経営トップに上申することにした。このまま「CMS B」を使い続けたのでは、目標としたコーポレートサイト拡充プロジェクトは道半ばで崩壊してしまうこと、Content Serverへ移行することにより、CMSをグループ全体のインフラとして利用できること、コーポレートサイトのコンテンツレベルを向上させ続けることが 可能であることを強く訴えたところ、了承を得ることができた。

単なる効率化から社会にアピールできる資産に

 Content Serverの導入によって、鈴木氏の業務は一変した。イントラネットに掲載される社内情報やグループ情報を、社内承認を経てターゲットとなるサイトへ アップロードできるようになった。それも、コンテンツが更新されたタイミングでサーバが自動配信するよう設定したので、最新の情報がリアルタイムに公開さ れるようになっている。保有している価値ある情報のすべてが社会にアピールできる資産として利用できるようになったため、グループブランド価値も向上。新聞社の企業調査でも、“AグループのWebサイトはコンテンツが多彩かつレベルが高く、内容が充実している”と高い評価を受けた。

■ここがポイント! <社内ID管理(ロール管理)と連動した承認フロー>

コンテンツの公開に当たっては、社内ID管理(ロール管理)と連動した承認フローが欠かせない。勝手なコンテンツ公開を許してしまうと、統一感のないサイトになってしまう。
 
伊藤忠テクノソリューションズは、「Content Serverの機能を利用して、単一部署、複数部署などのさまざまな権限によるワークフローの構築」を行い、「現場レベルに更新を一任しながら、サイト全体のユーザビリティやブランドの統一」を果たした。(伊藤忠テクノソリューションズのFatWire導入事例
 
大成建設もロール管理機能を活用。「各部門がコンテンツを作成し最終的に広報部が承認して外部へ発信するという体制」に切り替えつつあるという。(大成建設のFatWire導入事例
 
 鈴木氏の今後の目標は、“顧客視点で、各グループの経営に直接貢献し、社内と社外、グループ各社が有機的に連動するサイト”の確立。既に具体的な構想はあるという。Content Serverの存在を武器に、彼女の挑戦は続く。

 

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